2024.10.23

コツコツやるしかない

「このレベルだとプロにはなれませんよ」

「え?これでプロになれないんですか?」

スクール探し中の方や、入学して間もない方との、最近増えたやり取りです。

「誰でも簡単にWEBデザイナーになれる!!」

と謳うWeb広告(それ自体のデザインも悲しくなるレベル)のせいか、インターネット上で見かけるホームページレベルのものをつくれたら、じゃんじゃこ稼げると思ってしまうのかもしれません。

絵がうまくても全然関係ないし。

高学歴でも全然関係ないし。

でも、高い知的レベルが求められ、高い美的感覚が求められるお仕事だと思います。

それぞれの方にどんな能力が備わってるかわからないので「あなたには無理です」と言ったことはないと思いますが、結構なイス取りゲームだと思ってます。

おたよりを書く。

会ったこともない人に、おたよりを書く。

たくさんの人に、同じおたよりを書く。

数回話ししただけの人に変わって、おたよりを書く。

文字だけだと伝わらないから視覚の変化を使って、おたよりを書く。

おたよりを書いて、人の行動や心情を誘導する。

そう考えることもできると思うんですが、上記の作業が簡単だと思える人にとっては簡単だと思います。

でも、私達は同じ文字サイズで、同じような形の文字で文を書くことに関しては学生時代を通じて訓練されているかもしれませんが、視覚の変化、絵の要素を使って文を書くことに関してはほぼ未経験のはずです。

なので、訓練が必要ですし、時間がかかります。

言葉や数値の差異を、色や形に置き換えるには新たな感覚の意識づけが必要になります。

「1日に2コマ受講できますか?」

「毎日受講できますか?」

等々聞かれることもありますが、それはただただ情報が目の前を通り過ぎていくだけで、感覚に落とし込む時間が足りないと思います。

スクールを12年やってきて、焦りながら受講して、その感覚を身に付けた方を見たことがありません。

時間も数も足りず、ただただ自分が疲弊するだけです。

「自分は向いてないんだ」

と挫折する。

よくあるパターンです。

グラフィックデザイナーに就職して2年目の卒業生の方に久々に連絡したら

「毎日大変です…」

とのことでした。

彼女は今、高い感覚レベルが求められる場所で必死に自分の感覚を高めようと頑張っているんだと思います。

制作業務以外が大変なのであれば、それは逃げるべき苦労だと思いますが、仕事で苦しむのは何よりの財産だと思います。

自分の努力で身に付く感覚と、自分の努力だけでは身に付かない環境由来の感覚があると思います。

後者を見に付けれる者は選ばれし者か、余程の運の持ち主だけです。

時間をかけてコツコツやるしかないんですよ、と。

その作業が難しいから、それをできた人に価値があるんだ、というお話でした。

著者

著者

大阪本町制作所デザインスクール代表。講師。株式会社大阪本町制作所 代表取締役。初老のおっさん。